こんにちは、米国株バリュー投資家のMMです。
米国株への投資を行い、且つせっかくアメリカに住んでいるということで、色々な企業の分析をしつつ現地レポートを書いていきます。
このレポートはアメリカ生活で普段馴染みのある企業を改めて調べる良い機会でもあるため、個人的にもとても勉強になります。
今回はダウ平均にも採用されているネットワーク世界最大手の シスコシステムズ (CISCO SYSTEMS/CSCO)についてのレポートです。
目次
基本情報
シスコシステムズの基本情報をまとめます。
シスコシステムズってどんな会社?
ネットワークハードウェア、通信機器、ハイテクサービス・製品等を扱う世界最大のネットワーク機器企業になり、IoT(Internet of Things)、エネルギー管理システム、セキュリティー領域に特化しています。
NASDAQ市場に上場し、ダウ平均、S&P500にも採用され、株式市場における産業分類は 通信機器(Network equipment) です。
創業は1984年アメリカのカリフォルニア州サンノゼで、従業員数は7.2万人、ITバブル期の2000年には時価総額世界一になっています。
売上の主要製品としては、ネットワークの根幹機器であるスイッチ、ネットワーク構築に不可欠なルータサービス、ビデオ会議や遠隔授業といったコラボレーションサービス、その他データーセンター運営や、ワイレス機器などがあります。
*製品別売上構成 (Cisco Systems Annual Report より)
売上構成 | 比率 |
---|---|
スイッチ | 30% |
NGNルーティング | 15% |
コラボレーション | 9% |
データーセンター | 7% |
ワイヤレス | 5% |
SPビデオ | 5% |
セキュリティ | 4% |
その他 | 1% |
サービス | 24% |
IT大国アメリカの土台とも言えるシスコシステムズは最新の技術を基に成長を遂げてきていますが、それ以上の強みが買収(M&A)の上手さです。
新しい技術が次々と生み出されるIT業界において買収による技術の獲得は成長には不可欠になりますが、シスコには買収の計画・実行の専門部隊があり、失敗率が7~8割と言われていると M&A において多くの成功を収めています。
買収された側の従業員も8~9割程は残り続けており、IT企業では最も重要な技術を持っている人の確保にも成功しており、相手の文化を尊重しつつ相乗効果を発揮できる巧みさを持っていることが強さの秘訣です。
1993年以来買収した企業の数はなんと184社!にも上ります。
世界一買収に長けている企業と言えるかもしれませんね。
CEO
現在の シスコシステムズ の CEOは チャック・ロビンス(Chuck Robbins) で、元々は シスコに買収されたウェルフリートコミュニケーションズのアプリ開発出身です。
17年間のシスコシステムズでのキャリアと販売統括の副社長を務めた後、2015年からCEOになっています。
世界最大手の通信機器企業のCEOとあって、Bloombergニュースでもよく見かけます。
競合状況
IT大国のアメリカにおける通信機器、ネットワークサービスは名立たる企業が連なっています。
下記はシスコシステムズの製品・サービスに当たる競合企業です。
* Network worldより
製品・サービス | 競合企業 |
---|---|
スイッチ | IBM |
NGNルーティング | Juniper |
コラボレーション | Microsoft |
データセンター | Dell |
セキュリティ | VMwire |
SPビデオ | Polycom |
ワイヤレス | HP |
Juniper や VM wire といった企業はアメリカの中でもトップ20に入る程給料が高いことで有名で、給料が高いことは通信機器業界全般にも言えます。
高い報酬を用意することで優秀な人材を確保し、IT大国アメリカを支えています。
財務状況
ここからはシスコシステムズの財務状況を纏めています。
売上推移
2012年から2016年の売上データになります。
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | |
---|---|---|---|---|---|
売上(10億ドル) | 46.1 | 48.6 | 47.1 | 49.12 | 49.2 |
売上(億円) | 5,071 | 5,346 | 5,181 | 5,408 | 5,417 |
前年比 | 105% | 97% | 104% | 100% |
緩やかな成長を示しています。
2014年は特に新興国での経済状況悪化からネットワーク投資が落ち、売上が減りましたが、2015年からはまた上向きとなっています。
シスコシステムズの地域別売上比率は、米州60%、欧州中東アフリカ25%、アジア太平洋が15%となっています。
近年も買収のペースは衰えていませんので、今後も成長が期待出来そうです。
EPS推移
同じく2012年から2016年のEPS推移になります。
*EPS(一株あたりの利益) = 当期純利益 ÷ 発行済み株式数
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | |
---|---|---|---|---|---|
EPS | 1.49 | 1.86 | 1.49 | 1.75 | 2.11 |
前年比 | 125% | 80% | 117% | 121% |
売上と同様に2014年は新興国の売上減によりEPSも対前年割れを起こしていますが、他の年は売上の伸びよりも大きく、利益が大きく改善していることを示しています。
買収をしつつも利益を増やしているということで、強固な財務体質であるとも言えますね。
バリュー株の基準に合うか
いつも株を買うときはベンジャミン・グレアムの7つの基準に合わせて、条件が合えばバリュー株であると判断し購入するようにしています。
項目 | 基準 | GOOGL |
---|---|---|
S&P格付け | B以上 | AA- |
負債比率 | 1.1倍未満 | 0.55 |
流動比率 | 1.5倍以上 | 3.7 |
EPS成長 | 5年連続 | 4年 |
PER | 9倍未満 | 16.8 |
PBR | 1.2倍未満 | 2.6 |
配当金の有無 | 有 | 有 |
7つの基準の内満たしているのは4項目となりますので、グレアムの基準に則るとバリュー株では無いという判断となります。
この基準はかなり厳しいので中々クリアする企業は見つけられません。
来期の純利益を基にする予想株価収益率(FW P/E)は13.1、成長率を加味した PEG レシオは1.7ですので、ここでもあまり割安では無いという判断になります。
ですが、ダウ構成銘柄の中では間違いなく割安の部類に入りますね。
超大企業がグレアム基準を超えることは中々ないので、もう少し割安になってくれれば。。。という所ですね。
アメリカ在住者から見た シスコシステムズ
シスコシステムズは大半が企業向け製品、サービスなので、アメリカに住んでいるからと言って日常で大きく意識することは余りありません。
超大企業なので、ニュースでその情報が入ってくるのと、上述の通りCEOがBloombergに出てきてコメントをしたりしています。
日常ではあまり接しませんが、仕事では毎日 シスコのサービスを使っています。
Web会議で世界一のシェアを誇る WebEX を仕事で使わない日はありません。
他のWeb会議システムを使ったことが無いので比較は出来ないのですが、WebEXはWebを通じて会議に参加することが出来るため、どこからでも参加が可能です。
スマホのアプリもあり、スマホからの参加が可能なため、会議室に集まる必要もありませんし、家からでも移動中の車の中からも参加が可能です。
また録画機能もあるため、参加が出来なければあとで録画を見ることが出来ます。
アメリカは国土が広く、東海岸と西海岸の時差は3時間、移動も飛行機で6時間掛かる為、経費と時間の削減をするためにWeb会議システムは必須です。
世界中との会議も家のスマホからでも出れるので、生産性の向上に大きく寄与してくれています。
このWebEXもシスコが買収した企業なので、今後もより良いサービスを提供してくれはずです。
まとめ
バリュー株の観点からは外れてしまいますが、あともう少しの所ですね。
買収に強みがあるということは、必ず来る市場の変化や新たな技術にも素早く対応出来る可能性が高いことを意味します。
一つの技術に特化し過ぎているとそれが陳腐化してしまった時に経営が厳しくなってしまいますが、買収によって常に新しい技術を入れているシスコシステムズは今後生き残る企業形態のお手本の一つになるかと思います。
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