こんにちは、米国赴任中のMMです。
日本には多くの外国企業が進出していますが、それらの企業の存在だったり、就業のチャンスというのは、よほど興味が無い限りは知る機会はありません。
こちらの記事では日本にあるアメリカ企業の本社所在地一覧を紹介してみましたが、今回は米国企業日本法人がキャリア採用(中途採用)で求めるスキルを紹介してみようと思います。
世界のトップ企業が求める人材は非常にレベルが高いですが、求めていることを知ることはスキルアップの近道にもなりますし、それらのスキルを身につけることは人生のリスクヘッジにもなります。
まずは「知ること」が重要ですね。
前提条件
各企業の選定基準は前回と同じく、米国企業時価総額TOP50、年収TOP25社、育休制度がある19社とし、各社の採用ホームページから情報を集めてみました。
また自分の属性である大卒(学部卒)文系かつ営業以外の文系職を対象としています。企業によって部署名や職種名が変わりますが、なるべくシンプルに出来るよう部門は下記で言及する7つにまとめています。
求めるスキルも多岐に渡りますが、できる限り簡素化してみました。採用ホームページから情報を集めてみました。
大卒文系総合職が応募可能な部門(営業以外)
大卒文系総合職で、営業以外で応募可能そうな部門を6つにまとめてみました。
- ビジネスディベロップメント(Business Development)
- ファイナンシャルプランニング&アナリシス(FP&A)
- マーケティング(Marketing)
- チャネルマーケティング(Channel Marketing)
- プロダクトマーケティング(Product Marketing)
- マーケティングコミュニケーション(Marketing Communication)
2018年2月時点でオープンとなっている職種で調べていますので、時期によって増減はありますが、大まかな傾向はつかめるはずです。
日本の企業では馴染みのない部署名もありますので、それぞれについて簡単に説明してみます。
ビジネスディベロップメント(Business Development)
日本では聞き慣れないビジネスディベロップメントという部門ですが、多くのアメリカ企業は部門として設けており、キャリア採用でも募集は多くあります。
日本語に訳すと「事業開発」、これだけではイメージが湧きませんが、実はアメリカでも業務範囲が明確がなくWilipediaでも「組織に長期的な価値をもたらす」とされ、日本の総合職と少しイメージが近いかもしれません。
また必要知識・領域としては、セールス、ファイナンス、マーケティング、M&A、法律、戦略企画、プロポーザルマネジメント(キャプチャーマネジメント)の7つになります。
専門は持ちつつのオールランダーというイメージです。
ファイナンシャルプランニング&アナリシス(FP&A)
ファイナンシャルと聞くと経理部門のイメージがありますが、日本の経理部門は通常アカウンティング(Accounting)と呼ばれる部門にあたり、このFP&Aは経理とは別になります。
経理はいわゆる財務会計を扱う部門になりますが、FP&Aは管理会計と経営企画が混在している部門で、マネジメントの意思決定の策を考える部門になります。
具体的には事業PLの管理、売上予算実績管理、競合分析や市場動向からの将来予測、改善目標の提案等があります。
必要知識としてはセールス、マーケティング、ファイナンス、経営戦略が挙げられますが、MBAを持っていると有利になると言われています。
マーケティング(Marketing)
日本でもほぼ全ての企業が持っているマーケティング部門ですので特に補足説明はありません。 ただアメリカではマーケティングをより細部に分けて部門化しているケースがあります。
チャネルマーケティング(Channel Marketing)
マーケティングの4P(Product/Price/Price/Promotion)の内のPlace(流通)に特化したマーケティング部門になります。
特に近年は顧客関係管理(カスタマーリレーションシップマネジメント=CRM)が重視されていますので、ここのチャネルマーケティングに注目が集まっています。
流通ということは自分では無い他の人(企業)に販売をお願いすることになりますので、そのパートナーとの関係構築や、どのパートナーの収益が良いのか等を管理します。
プロダクトマーケティング(Product Marketing)
マーケティングの4P(Product/Price/Price/Promotion)の内のProduct (製品)に特化したマーケティング部門になります。
いかに販売利益を上げられる製品/サービスを作れるかを命題にもった部門になります。 市場ニーズから製品・サービス開発につなげ、ブランディング、販売促進までの業務を担当します。
マーケティングコミュニケーション(Marketing Communication)
マーケティングの4P(Product/Price/Price/Promotion)の内のPromotion (販売促進)特化したマーケティング部門になります。
販売促進といっても根底は顧客とのコミュニケーションであるため、TVCMやSNSでの一方的な広告に加え、店頭での接客やオンラインでの双方向の意見のやり取りを専門とします。
デジタルマーケティングやインターネットマーケティング等もマーケティングコミュニケーションの一つと捉えられ、急速に進むIT化に伴い需要も高まっている職種になります。
求められるスキル
それぞれの部門で求められるスキルを箇条書きで紹介します。
できるだけ同じ項目でまとめるようにしています。
ビジネスディベロップメント(Business Development)
分類 | スキル |
---|---|
ITスキル | マイクロソフトオフィスExcel/Powerpoint/Access |
ITスキル | CRMツールの経験Salesforce等 |
ITスキル | 経理システムの経験Oracle等 |
ITスキル | 顧客関係管理スキルCRM |
肩書き | ビジネスまたはマーケティング分野の学士号+MBA |
経験 | プロジェクトマネジメントの経験 |
管理 | 同時進行する複数プロジェクトの管理力 |
管理 | 厳しい時間的プレッシャーの中で、課題の重要度に優先順位をつけながらすばやく動くスキル |
経験 | 事業改善を行った経験 |
経験 | 多国籍企業での実務経験 |
経験 | 各種産業での経験経営コンサル、投資銀行、金融、IT、通信等 |
経験 | 事業計画、財務運営等の関連業務領域における3年以上の経験 |
経験 | 3-5年の多国籍企業での実務経験 |
経験 | 新規事業の立ち上げ経験 |
経験 | マトリクス型組織で上層部に影響を与えた実績 |
語学力 | 高い英語力スピーキング、ライティング |
人脈 | 特定の事業領域における強い人脈 |
知識 | データドリブンマーケティング知識 |
知識 | SQL やダッシュボード ツールの習熟 |
データ分析 | BIビジネスインテリジェンスを使ったデータ分析 |
データ分析 | 意思決定に繋がる数量的データ分析 |
募集企業:アボット、アドビシステムズ、ブリストルマイヤーズ、シスコシステムズ、グーグル、インテル、エヌビディア、ペイパル、クアルコム、ビザ
ファイナンシャルプランニング&アナリシス(FP&A)
分類 | スキル |
---|---|
ITスキル | SQL 、ソフトウェアの習熟 |
ITスキル | 優れたPCモデリングスキルExcel-Macro,Pivot,Lookup/Access |
ITスキル | MS Word/Excel, Oracle SQL, COGNOS, Access, and/or Essbase等に関する知識 |
ITスキル | ERPソフトSAP等、レポーティングツールHyperion等 経験 |
肩書き | 定量的分野における学士号+MBA/CPA) |
管理 | 厳しい時間的プレッシャーの中で、課題の重要度に優先順位をつけながらすばやく動くスキル |
管理 | プロジェクトマネジメント力 |
管理 | 同時進行する複数プロジェクトの管理力 |
経験 | 財務、会計、コンサルティングにおける4年以上の経験 |
経験 | 多国籍企業での実務経験 |
経験 | 事業会社の企画業務経験や変革プロジェクト経験 |
経験 | 財務分析、経営戦略企画、予算、予測業務の経験 |
語学力 | 高い英語力スピーキング、ライティング |
思考力 | 大局的思考力Big Picture Thinking |
データ分析 | ボリュームの多いデータから役に立つ情報を読みとるスキル |
データ分析 | 統計解析や多変量解析などのアナリティクススキル |
注意力 | 細部まで気を配ることのできる高い注意力 |
募集企業:アマゾン、アップル、ギリアドサイエンシズ、グーグル、ジョンソンエンドジョンソン、マスターカード、マイクロソフト、ナイキ、フィリップモリス、セールスフォース
マーケティング(Marketing)
分類 | スキル |
---|---|
肩書き | 販売、マーケティング、ビジネスにおける学士号+MBA) |
管理 | 組織管理、プロジェクト管理の経験 |
経験 | 統合マーケティングの経験 |
経験 | ブランドマネジメントの経験 |
経験 | ロイヤリティプログラム、ウィンバックプログラムの経験 |
経験 | デジタルマーケティングの経験 |
語学力 | 高い英語力スピーキング、ライティング |
知識 | 意思決定科学の知識 |
データ分析 | 市場ニーズの定性分析 |
データ分析 | 顧客セグメント、購買行動分析 |
データ分析 | 統計解析や多変量解析などのアナリティクススキル |
募集企業:アボット、ハネウェル、ネットフリックス、セールスフォース
チャネルマーケティング(Channel Marketing)
分類 | スキル |
---|---|
ITスキル | 顧客関係管理スキルCRM |
肩書き | 販売、マーケティング、ビジネスにおける学士号+MBA) |
管理 | 厳しい時間的プレッシャーの中で、課題の重要度に優先順位をつけながらすばやく動くスキル |
経験 | チャネルマーケティング、アウトバウンドマーケティング、アライアンスマネジメントの経験 |
経験 | 多国籍企業での実務経験 |
経験 | グローバル顧客管理経験 |
経験 | ビジネスデベロップメントの経験 |
経験 | バーチャルチームマネジメントの経験 |
経験 | リセラー再販業者、チャネルビジネスの経験 |
経験 | リテール小売、eコマース電子商取引のビジネス経験 |
語学力 | 高い英語力スピーキング、ライティング |
知識 | エコシステムの理解 |
知識 | フレームワークの知識 |
注意力 | 細部まで気を配ることのできる高い注意力 |
データ分析 | 統計モデリングによるデータ解析 |
募集企業:AT&T、グーグル、インテル、マイクロソフト、ナイキ、セールスフォース
プロダクトマーケティング(Product Marketing)
分類 | スキル |
---|---|
ITスキル | マイクロソフトオフィスExcel/Powerpoint/Access |
ITスキル | マイクロソフトオフィスExcel/Powerpoint/Access |
肩書き | マーケティング、ビジネスにおける学士号+MBA) |
経験 | プロジェクトマネジメントの経験 |
経験 | ビジネスデベロップメントの経験 |
経験 | 多国籍企業での実務経験 |
経験 | ソフトウェア、ハードウェアのプロダクトマーケティング経験 |
経験 | 動画編集、画像編集、ビジュアルエフェクトの経験 |
経験 | バーチャルチームマネジメントの経験 |
語学力 | 高い英語力スピーキング、ライティング |
知識 | マーケティング理論の理解 |
知識 | 特定事業における製品開発サイクルの理解 |
知識 | エコシステムの理解 |
募集企業:アドビシステムズ、クアルコム
マーケティングコミュニケーション(Marketing Communication)
分類 | スキル |
---|---|
肩書き | マーケティング、ビジネスにおける学士号+MBA) |
経験 | デジタルマーケティングの経験 |
経験 | マーケティングコミュニケーションの経験 |
経験 | マトリクス型組織でチームに影響を与えた実績 |
経験 | カスタマーエンゲージメントの経験 |
データ分析 | 統計解析や多変量解析などのアナリティクススキル |
募集企業:アボット、マイクロソフト
最も評価されるのは経験
上記の求められるスキルを見ていると、最も評価される、必要とされるのは「経験」になりますね。
アメリカで説得力のあるスキルでも、経験は学位・資格についで2番目になりますし、キャリア採用では即戦力として活躍されることを期待されますので当然のことかもしれません。
また個人的にITスキルも求められるのは意外だなと思いましたが、どの企業でもパッケージソフトを導入していますので、それらを使えることもまた重要な項目ですね。
、
言語化される能力、経験
アメリカで生活していて思うのが、日本語より言語化されている能力、経験が多いということです。
実際今回調べていても、知らない英単語が多かったのですが、説明を見ると「あーこのことか」と思うことがあります。
普段仕事をしたりしていても自分にどの能力があるかわからないのですが、アメリカ企業の募集要項の求める能力を見ていると意外に自分も持っているかも、というのがありました。
そういう意味でも求められるスキル一覧を知ることは重要だと感じます。
リスクヘッジのために「知る」
日本企業で働いている人は皆そうかもしれませんが、中々自分のやってきた業務・スキルを明確に言う事は難しいです。
総合職の場合、いわゆるジェネラリストで業務は広く浅くやることが多く、これといった専門知識があるとは言えませんね。
でもそれらは日本語で言語化されていないだけで、その概念を知ると意外と語れることは増えてきます。
なのでまずはどういうスキル、経験が求められているかを知ることが重要だと考えています。
業務上で自分を語れることは就業の機会を増やすこと、自分のスキルを言語化することで人生のリスクヘッジとしたいですね。
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント