こんにちは、米国駐在中のMMです。
日本とアメリカの働き方の違いは様々ありますが、その内の一つにメンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用というものがあります。
日本の労働文化のままアメリカで働くことは文化の違いから苦労することもありますし、逆にアメリカで良いと思った働き方を日本で行おうと思ってもそのままでは上手くいきません。
それぞれ別の労働文化があり、メリット・デメリットがありますので、それらを理解した上で働くことは不要なストレスの発生を防いでくれます。
実際にアメリカで働いていると「この働き方は良いな」「日本でも取り入れるべきだな」と思うこともありますが、それぞれの根底である雇用文化を知っておくと、どうすれば良いかについても少し考えることが出来ます。
今回は企業に雇われているサラリーマンにはぜひ知って欲しいメンバーシップ型雇用・ジョブ型雇用を紹介します。
目次
メンバーシップ型雇用
メンバーシップ型雇用とはいわゆる日本型雇用を指し、以下の特徴があります。(参照:首相官邸「今後の労働法制のあり方」)
- 職務・労働時間・勤務地が原則無規定
- 新卒一括採用による「入社、就社」
- 解雇回避努力義務あり
- 残業拒否、転勤拒否は解雇自由になりえる
- 人に仕事を割り当てる
メンバーシップとはその名の通り、企業の一員(共同体)となることを指します。
鎌倉時代、武士は仕えてくれる家来に土地等を与えて主従関係を結ぶことで武士団を結成しました。(御恩と奉公)
武士はその武士団を形成するメンバーたちを守ったり面倒を見たりする義務を負いましたが、この文化は脈々と受け継がれ、今の日本のメンバーシップ型雇用の基になっている、と考えています。
メリット
従業員としての最大のメリットは、企業側に解雇回避努力義務にあること、専門知識の無い人(特に若者)でも育ててくれること、です。
解雇回避努力義務とは、簡単に言うと従業員の雇用を守る、すぐに解雇を行わない、ことを指します。
新しいシステム導入等で部門の仕事が無くなったとしても、配置転換等を行い、雇用を守る努力が企業側にはあります。
また専門知識がなくても、会社が育ててくれて専門知識を養うことができますので、一度メンバー(従業員)になれば、厚い保護を受けることができます。
デメリット
デメリットとしては、会社優先になってしまうこと、転職が難しいこと、です。
メンバーシップ型雇用では、労働時間も職務内容も勤務地も明確になっていませんので、会社の意向でそれぞれの内容が変わり得ます。
定期的な残業、仕事が慣れてきた段階での異動、急な転勤など、日々の生活が会社優先になりがちですし、場合によっては社内イベントを優先する必要もあります。
またメンバーシップ型では従業員は家族に近い関係ですので、そこから他企業に行くには心理的障壁もありますし、身につく能力もずっと残る前提での教育となり、転職がしやすいとは言えません。
ジョブ型雇用
メンバーシップ型雇用とはアメリカ(欧米)型雇用を指し、以下の特徴があります。(参照:首相官邸「今後の労働法制のあり方」)
- 職務・労働時間・勤務地が限定
- 欠員補充による「就職」
- 職務消滅による解雇は正当
- 仕事に人を充てる
メンバーシップ型は企業の一員(共同体)となりますが、ジョブ型はあくまで「個」であり、企業は働く場所・手段である、と考えます。
メリット
従業員としてのメリットは、自分優先にできること、転職しやすいこと、です。
ジョブ型雇用においては、業務内容は職務記述書に記載されていることのみで、原則は労働時間も勤務地も変わることがありません。
そのため自分の時間を持つことができたり、転勤を気にせずに自由に住居を決めることができます。
また必然的に専門知識を持つことになりますので、転職しやすいことも挙げられます。
デメリット
デメリットは雇用が守られないこと、専門知識が無い場合に職に就くことが難しいこと、です。
ジョブ型は「就職」であるため、その職業が不要になった場合は解雇となります。
また不況等で経営状況が悪化した場合のリストラも行いますので、いつ職を失うかわからないという不安定さがあります。
また雇う側はあくまで即戦力である専門知識を持っている人のみを対象としているため、そのような知識が無ければ職に就くこと自体が難しくなります。
「ジョブ型」のアメリカで働いて思うこと
日本で働いていたときはメンバーシップ型でしたが、アメリカ赴任後は日本企業ですがアメリカ法人ですのでジョブ型の文化です。
そのジョブ型のアメリカで働いて思うことは、正直な所「働きやすい」です。
具体的な内容は下記の記事に書いてみました。
ですが、自分の立場は実はちょっとずるくて、ジョブ型でありながら本来最大のデメリットである雇用が守られています。
なので、この立場で「メンバーシップ型よりジョブ型の方が優れている!変えた方が良い!」というのは公平ではないのですが、それでもジョブ型は基準がはっきりしているので良いなとは思います。
本当は、ジョブ型とメンバーシップ型の良いとこどりが最も働きやすい環境だとは思います。(労働時間は長くなってしまいますが。。笑)
若いアメリカ人はメンバーシップ型に憧れる?
勤め先はアメリカ法人であると言ってもやはり日本企業ですので、一般的なアメリカ企業よりは雇用を守ることに重きを置いています。
働いている同僚の何人かはこの「雇用を守る」という姿勢を良いといっていましたし、日本の終身雇用制がうらやましいとも言っていました。
やはり実際のジョブ型となると常に競争にさらされ、良い実績を残していたとしても急なリストラなどがあり、そこでまた職を探すのは正直疲れるとの本音も聞けました。
もちろん全てのアメリカ人の意見ではありませんし、隣の芝生は青く見えますので、実際にメンバーシップ型で働いてみたら違ったということもあるかもしれません。
ですが、やはり良いと思えるジョブ型にも大変なことはありそうです。
外資(欧米系)の日本法人は働きやすい?
これは単なる個人的な考えなのですが、このジョブ型、メンバーシップ型に焦点を当ててみた時、最も働きやすいのは外資(欧米系)の日本法人なのかもしれない、と思いました。
ジョブ型の欧米企業は日本法人でもジョブ型を基本的には維持している所が多いです。
専門職採用や職務や勤務地の限定をしている所が多いのがその証拠かと思います。
一方いくら外資であっても日本法人である以上解雇回避努力義務というのはある程度求められるようなので、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド環境ができていることになります。
日本企業での海外赴任と違って労働時間も明確に決められているのであれば、最も働きやすい職場かもしれません。
実際はそのような理想はなく、大変なこともたくさんあると思いますが、理屈の上だけで考えてみました。
まとめ
メンバーシップ型、ジョブ型、それぞれにメリット・デメリットはありますが、日本の中では今後ジョブ型が増えていく流れになりそうです。
雇用の不安定性は確かにありますが、その分転職しやすくなれば、幾分かはそのデメリットも少なくすることができそうです。
問題なのは不況時に職に就けない人が増えてしまうことで、そのようなリスクに備えて複数の職を持つ複業も推し進めていけば良いかもしれないな、と考えてみました。