こんにちは、アメリカ赴任中のMMです。
出生地主義を取っているアメリカでは両親の国籍に関係なく、アメリカで生まれれば米国国籍が与えられます。(米国国籍法:United States Nationality Lawより)
アメリカで生まれた我が家の子供もこの出生地主義に則り米国籍が与えられています。
日本国籍も持っているため、現在はいわゆる二重国籍となります。
アメリカに永住するわけではなく日本に帰国する予定ですが、そのような状況で子供が米国籍を持つことにどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
ネットで調べても意外にその情報は多くなかったのでまとめてみました。
アメリカ国籍を持つことのメリット
米国籍を持つ=米国市民(US Citizen)と言われますが、一般的に言われているアメリカ国籍があることのメリットを挙げてみます。
- アメリカ国内でビザ無しで居住が出来る
- 選挙権があり、国会議員/大統領への立候補が出来る
- 職業選択の自由がある
- 両親/配偶者の永住権(グリーンカード)取得がスムーズ *兄弟は時間が掛かる
- 入国時にアメリカ市民(US Citizen)窓口に並べる
- 外国での事故やトラブルにおいて、米国大使館の保護対象になる
参照 : 日米ソーシャルサービス(Japanese American Social Service)
各項目を解説します。
アメリカ国内でビザ無しで居住が出来る
Yahoo知恵袋 や発言小町に実際に米国籍を取得した日本人の方や検討している方の意見がありますが、メリットとして一番上がっているのは手続き無しでアメリカ国内に住めることです。
日本国籍保有者が日本にビザ無しで住めるように、米国籍保有者はアメリカにビザ無しで住むことができます。
外国人がアメリカに住む場合は何らかのビザ(査証)が必要とされますが、近年そのビザの審査も厳しくなっており、誰でも気軽に住めるというわけでは無くなっています。(旅行であれば敷居はぐっと低くなります)
グリーンカードと呼ばれる永住権がアメリカにはありますが、グリーンカードの場合1年間の内半年以上外国で過ごすとその権利が剥奪されてしまいます。
一方米国籍であれば海外への滞在期間に制限はありません。
アメリカ国内、国外を自由に行き来、居住できることがメリットと言えます。
選挙権がある
グリーンカード保有者には選挙権がありませんが、米国籍保有者は選挙権を持ちます。
また国会議員への立候補、大統領への立候補も可能です。
ここら辺は日本に住んでいると全くピンと来ませんが、グリーンカードでアメリカに住んでいる方にはこの選挙権が欲しいために米国籍取得を検討する方が多いようです。
というのも多くの移民、企業、文化からなるアメリカでは政治の決定が個人の生活に大きく影響するため、自分達の生活が少しでも楽になるよう政治に対して積極的に参加をしています。
米国籍保有者は自分の生活を左右する政治への参加が可能なこともまたメリットです。
職業選択の自由
外国人や永住権保有者が就くことができない連邦政府機関や州政府機関といった公職に就職することが可能です。
そういう意味で米国籍保有者はアメリカ国内で職業選択の自由が保障されています。
両親/配偶者の永住権(グリーンカード)取得
米国籍保有者はアメリカ人ではない両親、配偶者への永住権(グリーンカード)を優先的に発行してもらうことが出来ます。
永住権の取得方法については以下の方法があります。
- 米国籍保有者からの依頼
- 抽選 (年に一度)
- 米国への投資 (50万ドル=5,500万円以上)
- 成功実績 (スポーツ、芸術、科学、事業など)
- 米国企業からの申請
これらの中で申請から取得までの期間が最も短いのが米国籍保有者からの依頼で約1年間、その他の4つについては2~5年掛かると言われています。(参照:アルビス国際法律相談事務所)
但しこの時は米国籍保有者は21歳以上であること、申請する両親・配偶者を養えるだけの収入が必要です。
*兄弟の分も申請できますが、両親・配偶者より時間が掛かると言われています。
入国時にアメリカ市民(US Citizen)窓口に並べる
各地に世界各国との国際線をつなぐハブ空港を持つアメリカですが、外国人に対する入国審査は世界一厳しいとされ、到着時間の遅れ等が重なると入国まで2-3時間掛かってしまうこともあります。
アメリカ市民の場合は外国人より審査が短く、担当者も多く振り分けられ優先的に入国できますので、メリットと言えます。
*グリーンカードでも入国時はアメリカ市民の列に並べます。
有事の際にアメリカ政府の保護対象となる
米国籍を保有する人が海外で事故やトラブルに巻き込まれた場合、アメリカ政府の保護対象となります。
例えば海外旅行中や海外に住んでいる時にし自然災害や紛争に巻き込まれた時に各国を自国民救出の手配を整えますが、米国籍保有者はアメリカ政府からの援助を受けることになります。
*グリーンカードの場合はアメリカ国籍では無いので、自分の国籍の国からの保護対象になります。
アメリカ国籍の義務
日本国憲法では国民の三大義務として、勤労・納税・教育が規定されていますが、アメリカ合衆国憲法にはそのような国民の義務の規定はありません。
ですが、移民が米国籍を取得する(=帰化する)際にはアメリカに対して忠誠を誓う宣誓を行いますが、その誓いには下記を意味し、これらが実質的な米国市民の義務と言えます。
- アメリカ合衆国憲法への忠誠の誓い
- *以前保持したすべての外国への忠誠の放棄の誓い
- 国内外の敵からアメリカ合衆国憲法を守る誓い
- 法律が定めた場合、兵役に従事する約束
- 国家の大事の際、法律が定めた市民としての義務を果たす約束
*帰化した場合のみ
我が家のような二重国籍の場合に特に気にするべきことは、確定申告と選抜徴兵登録の2つになります。
確定申告(タックスリターン)
米国籍を保有する場合、アメリカ国外に住んでいても多重国籍であっても毎年アメリカへの確定申告義務があります。(参照:IRS)
但し海外在住の場合の課税対象額は、2014年度は年収99,200ドル以上(1,091万円)となっており、課税対象でない場合は確定申告をしなくても罰則規定はありません。(参照:Yahoo 知恵ノート、IRS) 非課税であっても確定申告は必要なようです。
またコメントで下記アドバイスを頂きましたので掲載します。
「但し海外在住の場合の課税対象額は、2014年度は年収99,200ドル以上(1,091万円)となっており、課税対象でない場合は確定申告をしなくても罰則規定はありません。」
これは誤りです。
Foreign Income Tax Exclusionにより非課税扱いにはなるのですが、確定申告の義務はあり罰則もあります。確定申告をしないと、この非課税枠が適用されなくなり、発覚すると収入全額に対して課税されることになります。
アメリカ居住者と同様に、申告義務がないのは約1万ドルまでの場合のみです。また自営業であればこの非課税枠は適用されず、年間$400以上の所得にSelf-Employment Taxが課税されます。
さらに大きな問題となるのはFBARで、収入がなかったとしても合計$10000以上のアメリカ国外金融資産は全て毎年報告対象です。違反1件につき1年$10000という多額の罰金が発生します。
つまり日本に「合計」100万円以上の銀行口座、投資信託口座、確定拠出年金口座などがあれば全て開示しなければいけません。これらのとてつもない負担により米国籍を放棄する人が年々増えています。
二重国籍はこの確定申告に気づいていないことが多いですが、アメリカに居住する際に過去3~6年分を遡って請求を求められます。(課税対象でなくても確定申告は可能で、その方がいざという時の手間が省けます)
その際は弁護士事務所(米国税理士)を通して確定申告書類を作成することが一般的です。
選抜徴兵登録制度(セレクティブ・サービス・システム)
米国籍保有者とグリーカード保有者で、18歳から25歳までの米国在住の男子はセレクティブ・サービス・システム(選抜徴兵登録制度)という制度への登録が義務付けられています。
米国大統領・米国議会は国の緊急事態や戦争時に軍隊の拡大が必要となった場合、セレクティブ・サービス・システム登録者から徴兵をすることができます。(参照:Selective Service System)
対象者が登録を怠った場合、250,000ドルの罰金または5年間の禁固刑、奨学金が受けられなかったり、公職へ就けないといったペナルティがあります。
アメリカには現役兵に加えて軍人として訓練を受けている予備兵が多くいることに加えて、レクティブ・サービス・システム(SSS)登録者の徴兵には国会での手続きが必要なため、通常SSS登録者が徴兵されることはほぼ無いとされています。
ただ登録されている以上、召集が掛かる可能性はあります。
二重国籍に対する日米の考え
グローバル化に伴い二重国籍もしくは多重国籍保有者は増加傾向にありますが、スタンスは各国によって違っています。
日本とアメリカの二重国籍に対する考えを見てみます。
日本のスタンス
日本の場合では国籍法により二重国籍者は22歳までにどちらか一方の国籍を選択することとしています。
国籍法第十四条
外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなった時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
ですが実態としては選択をしなくても罰則の例はなく、事実上の容認とされています。
ただ公には二重国籍を認めているわけではないので、日本で暮らす場合は日本の国籍のみを持っている前提とされます。
米国のスタンス
米国の最高裁判所は二重国籍を法律上認められる資格とし、米国政府は二重国籍を認めています。
ですが、二重国籍によって生じる問題もあるため方針としては二重国籍を支持はしていません。(参照:在日米国大使館HP)
我が家が感じるメリット
ここまで米国籍のメリット、義務を見てきましたが、子供が米国籍を持つ親の立場として、どういうメリットがあるかを考えてみました。
アメリカの州立大学への進学
一番メリットがあるケースは子供がアメリカの大学に進学する場合になります。
私立大学は米国市民も留学生も授業料は変わりませんが、州立大学の場合は州内居住者と州外居住者では学費が大きな差があります。
州内居住者の条件としては州によって違いますが、大体半年間住むこととなっています。
米国籍保有者はビザ無しでアメリカ国内に住むことができますので、生活費さえあればこの条件をクリアすることが出来ます。
ここでの問題は2つ。
いくら学費が安くなると言っても生活費も含めると日本の何倍ものお金が掛かってしまいます。
まだまだ先のことですが、我が家として留学を積極的に勧めることも無いと思いますので、このメリットを生かせるかどうかは分かりません。。
それと留学に行く場合、セレクティブ・サービスへの登録が必要となります。
米国籍保有者の義務ですのでしっかり果たさなければいけないですが、正直親としては心配になるというのが本音です。
グリーンカードの取得
米国籍保有者は両親への永住権を優先的に発行することができ、我が家もこの可能性があります。
ですが、実現可能性は限りなくゼロに近いです。
一つ目の理由として、米国籍保有者が両親を養えるだけの稼ぎが米国であることが条件ですが、これはアメリカで現地採用されて稼ぐことを意味します。アメリカでの現地採用はネイティブの英語力、もしくは世界的に通用する技術・能力が必須となりますが、我が家の今後から考えてかなり厳しいと思います。
子供の可能性を否定しているわけではなく、実際にアメリカに住んで日本人が現地採用でそれなりの収入を得ることの難しさを実感しての考えになります。
もう一つの理由が仮に両親である僕らがアメリカでの永住権を得たとしても、上記と同じ理由でアメリカ国内で収入を得ることは難しいですし、日本より不自由な生活になる可能性が高いからです。
入国時にアメリカ市民(US Citizen)窓口に並べる
正直な所、一番メリットとして感じるのはこれかもしれません。
子供が小さい内は同伴の両親もアメリカ市民の列で入国審査を受けられます。
アメリカの空港の外国人の入国審査はかなり時間が掛かるため、空いているアメリカ市民で入国審査を受けられるのは時間が節約できてとても快適です。
ただこれも子供がある程度大きくなると別々になるようなので、期間限定のメリットですね。
まとめ
長々となりましたが、子供がアメリカ国籍を持つことのメリットは様々ありますが、一方で義務を負うことも理解しておく必要があります。
我が家の場合はものすごいメリットを見つけることが出来なかったのですが、他の方にはメリットであったり、子供自身がメリットに感じることは他にもあるかもしれません。(逆にデメリットも)
どちらの場合でも「知る」ことは重要ですので、今回の記事が参考になれば幸いです。
コメント
「但し海外在住の場合の課税対象額は、2014年度は年収99,200ドル以上(1,091万円)となっており、課税対象でない場合は確定申告をしなくても罰則規定はありません。」
これは誤りです。
Foreign Income Tax Exclusionにより非課税扱いにはなるのですが、確定申告の義務はあり罰則もあります。確定申告をしないと、この非課税枠が適用されなくなり、発覚すると収入全額に対して課税されることになります。
アメリカ居住者と同様に、申告義務がないのは約1万ドルまでの場合のみです。
また自営業であればこの非課税枠は適用されず、年間$400以上の所得にSelf-Employment Taxが課税されます。
さらに大きな問題となるのはFBARで、収入がなかったとしても合計$10000以上のアメリカ国外金融資産は全て毎年報告対象です。違反1件につき1年$10000という多額の罰金が発生します。
つまり日本に「合計」100万円以上の銀行口座、投資信託口座、確定拠出年金口座などがあれば全て開示しなければいけません。
これらのとてつもない負担により米国籍を放棄する人が年々増えています。
Waltさん
ご指摘頂き有難うございます。
自分としても当事者ではないため、詳細のイメージがつかなかったため大変助かります。
記事を修正いたします。
今後も宜しくお願いいたします。